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言語処理系をつくろう(第7回):比較演算子を実装する

自作の言語処理系開発日記の第7回です。前回までで変数の実装が終わったので、ここからはいよいよ制御構文を実装…と思ったのですが、制御のためには比較演算子を実装する必要がありました。

ということで、今回は比較演算子を実装していきます。基本的には四則演算と変わりないのであまり難しくはありません。

比較演算子の仕様

比較演算子を実装する前に、その仕様について少し考えておきます。

比較演算子の結果は真偽の2値ですが、データ上は真を1、偽を0で表すこととします。こうした理由は特にないのですが、一番直感的に分かりやすい形にしました。処理系の中で統一されていれば問題ないので、0/1でなくてもOKです。

実装してみる

トークナイザ

トークナイズの処理はこれまでと変わらずですが、==(等価)や<=(以下)は2文字で1つの演算子になるので、(代入)や<(未満)と間違えて解釈されないように注意します。

この場合、最長一致で見つけていくのが良いので、以下のように処理の順番を1文字の演算子よりも先に持ってくるようにします。

〜省略〜

else if(strncmp(input, "<=", 2) == 0){
	Token token = { TK_RESERVED, input, 2 };
	tokens.push_back(token);
	input += 2;
}
else if(strncmp(input, "<", 1) == 0){
	Token token = { TK_RESERVED, input, 1 };
	tokens.push_back(token);
	input++;
}

〜省略〜

構文解析器

新しい演算子を追加するので、生成規則にもそれらを追加します。修正後の生成規則はこんな感じです。

program = expr ("," expr | "\n" expr)*
expr = ident "=" compare | compare
compare = add | add ("==" | "!=" | "<" | "<=" | ">" | ">=") add
add = mul ("+" mul | "-" mul)*
mul = unary ("*" unary | "/" unary)*
unary = ("+" | "-")? primary
primary = ident | num | "(" compare ")"

新しい生成規則としてcompareを追加し、これまでの規則中のaddをそれに置き換えています。というのも、比較演算子の優先順位は四則演算よりも低いので、構文解析時には優先的に展開される必要があるためです。これにより、1+2<1+3のような式も正しく処理することができます。

続いて実装ですが、ノード種別の追加は==!=<<=だけで十分です。>と>=については、<<=の左辺と右辺を入れ替えて評価するだけでよいためです。

// ノード関連の定義
typedef enum {
	ND_NUM,			// 数値
	〜省略〜
	ND_EQ,			// ==
	ND_NEQ,			// !=
	ND_LESS,		// <
	ND_EQLESS,		// <=
} NodeKind;

構文木を作る処理もこの通り、左辺と右辺の入れ替えで対応します。

〜省略〜

else if(consume("<")){
	node = new Node{ ND_LESS, addNode, add()};
}
else if(consume("<=")){
	node = new Node{ ND_EQLESS, addNode, add()};
}
else if(consume(">")){
	node = new Node{ ND_LESS, add(), addNode}; // 右左辺を入れ替え
}
else if(consume(">=")){
	node = new Node{ ND_EQLESS, add(), addNode}; // 右左辺を入れ替え
}

〜省略〜

コード生成器

コード生成についても構文解析と同じく、==!=<<=に対応した各命令を新たに定義します。

// 命令関連の定義
typedef enum {
	〜省略〜
	OP_EQ,			// ==
	OP_NEQ,			// !=
	OP_LESS,		// <
	OP_EQLESS,		// <=
	〜省略〜
} OP_CODE;

実行系(仮想マシン)

仮想マシンについては、新規追加した各命令に対する実処理を実装するだけです。特に四則演算と変わりません。比較結果がスタックにPushされます。

〜省略〜

case OP_EQ:
{
	push(reg[op->operand] == reg[op->operand2]);
	break;
}
case OP_NEQ:
{
	push(reg[op->operand] != reg[op->operand2]);
	break;
}
case OP_LESS:
{
	push(reg[op->operand] < reg[op->operand2]);
	break;
}
case OP_EQLESS:
{
	push(reg[op->operand] <= reg[op->operand2]);
	break;
}

〜省略〜

これで比較演算子を扱えるようになりました。今はまだ使いどころがないですが、次回以降で制御構文を実装すると、これらの演算子が活きてくることになります。

今回の実装は以下のコミットです。全コードはこちらをご覧くださいm(_ _)m

比較演算子を実装(112716a)

ではでは

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Ryo Yoneyama

とある会社でソフトウェアエンジニアをしています。技術的な備忘録を中心にまとめてます。ネタがあれば日記も書きます。

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